自分のバイクにどんな車載工具が必要で、どんなものが積んであるかご存知ですか?
「ああ、あの固い黒のビニール袋に入ってるやつ?」
「整備はショップに任せるから、あるのは知ってるけど一度も開けたことがないよ」
という人も場合によってはいるかもしれません。
ですが、バイクは細かい部品やたくさんのネジが使われている精密機械。出物腫れ物所嫌わずと昔から言うように、いつどんなアクシデントに遭遇するか、あらかじめわかる人はいません。
そんな時も、「六角レンチ一本あれば済むようなことで立ち往生」だとしたら、立ち往生していることより、『なんであるべきもんがにゃぁだがや!』と名古屋弁ばりに地団駄を踏んで悔しく思うことでしょう。
また、「現地調達すれば大丈夫でしょ!」と思っていても出先で都合よくホームセンターが見つかるという補償はあいにくどこにもありません。
そこで今回は自分のバイクに乗っている車載工具をもう一度見直し、自分で足していくべき工具や、お役立ちグッズをいくつかご紹介していきます。
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Contents
まずは自分のバイクの車載工具を見直しから
バイクを買えば中古車や市販レーサーを除いて、基本的にはいくつかの車載工具が標準装備されています。
しかしそれを実際に使ったことがある、またはそれらの工具を事前知識なしで適切に使いこなせるという人は意外に多くありません。
しかし、ツーリング中のもしもの時に頼みの綱になるのが車載工具という存在です。
運悪く出先で破損した箇所を修理できなければ、高額のレッカー代を支払うリスク・予定の帰宅時刻が大幅に遅れてしまうリスクを常に抱えることになるでしょう。
だからこそ、自分のバイクの車載工具は一通り必要なものを用意しておく必要があるというわけですね。
ここで、最近のバイクの車載工具をいくつか見ていくことにしましょう。
例:ヤマハMT-07に搭載されている車載工具
最近軽さと操作性が受けているYAMAHAのMT-07。こういう最新のバイクなら、標準的な工具がそろっているのだろうなと思いきや・・・。
- 六角レンチ(大)
- 六角レンチ(小)
- ソケットドライバー
- ドライバーの取っ手部分
- エクステンションバー
- サスペンションレンチ
- 結束用ゴムバンド
実際はたったのこれだけ。オーナー様もかなり拍子抜けしたと思います。
これを見る限り、まるで「サスペンションの調整はしていいけど、他はいじらないでね、」といわれているよう。
基本的に最初に付属している車載工具は当然コストダウンを意識しているため、材質は鉄の貧弱なメッキがかかっているだけですし、ドライバーも十分なトルクを掛けて回せる代物ではありません。
エクステンションバーはサスペンションレンチを回すためだけのテコの力を強めるためだけのもので、これでは何かあった時に非常に心細いです。
薄っぺらくて変な凹凸のある車載工具では、奥まったところにあるナットの1つも回せません。
故障箇所によっては大きなトルクを掛ける必要があるので、スパナやドライバーなどのつかみものは丈夫くて使いやすいものが欲しいところですよね。
でも最近では、軽量化の為にこのくらいのセットしかないバイクも増えているとか?
緊急時に持っておいた方が良い工具や予備パーツ
先ほどのMT-07純正車載工具の少なさは確かに驚きですが、もしロングツーリングに行くとなれば、緊急事態に遭遇する可能性も普段より多くなりますから、工具も多い方が安心感が増すというもの。
ただ、弁慶ではないので工具が多すぎるとバイクが重くなってしまいますし、何よりシート下やバッグに収まるものはスペースが限られています。
当然ながら燃費や走行時の微妙なバランス感覚にも影響してきます。
ですので、「起こりうる出来事をある程度広く想定したうえで最低限の工具として絞っていく」という方が良いでしょう。
バイクでは、以下のようなトラブルを考慮して工具やグッズを準備しておくことが望ましいです。
- 電装系のトラブル
- 転倒によるパーツ破損トラブル
- バッテリーのトラブル
- パンクなどタイヤのトラブル
では、順番に解説していきます。
電気的なトラブルの対策用品と工具
バイクは精密なものから原始的な電気部品などを組み合わせて動いているもの。
どんな年式のバイクであれ、以下の様なトラブルは時と場合によって起こる可能性が高いです。
バイクをカスタムしている・していないにかかわらず、電装系のトラブルは起こるものと予想し、以下のものは一通り必要になると思ってもいいでしょう。
バイクに起こるトラブルと必要になるものの例が以下になります。
想定される症状 | 必要になるもの |
ターミナルのゆるみ | プラスドライバー |
電球の球切れ | 予備の電球 |
ヒューズ切れ | 予備のヒューズ |
ハーネス等の断線 | 予備の電線・カッター・ラジオペンチ・絶縁テープ |
バッテリー切れ | 携帯型ブースター |
ヒューズはバイクの常備薬
電気系のこういったトラブルに対応する際にはヒューズ切れがつきもの。ロングツーリングならヒューズや電球の予備は持っていく方がいいですね。
バイクであれば平型のヒューズ、それも小型のものがメインになるのでアンペア数を確認して用意しておきましょう。
基本的には10Aから30Aまでのものをそれぞれ3つぐらいを用意しておけば安心です。
また、購入する場合にはバッテリーに直結する部分以外はほとんど小型のヒューズになるので、間違えないようにしましょうね。
参考元:https://item.rakuten.co.jp/prinet-kyoto/afm-100-mail/
ミニ平型 ヒューズ 【ネコポス便可】選べる種類【1個96円】 ミニ平型ヒューズ ゴールドメッキAFM-100/02P27May16
近くのバイク用品店では1個1個が割高かもしれないので、カー用品のアウトレットを狙ったり通販でバラセットを購入する方がコスパが高いです。
断線時の対策に電線とペンチを
何かしらの断線に対応するため、または断線部分のパイパス手術をするために30㎝くらいの電線を工具バックに一本入れておくと便利です。
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また、電工工具まではなくても、絶縁テープとカッター、そして先の細いラジオペンチ(できれば根元に線を切るニッパーがついているタイプが好ましい)があれば、仮に電線のバイパスを作るくらいのことはできるでしょう。
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電気系統の修理をするためには「つかむ・かしめる・切る」をストレス無く行えるものが望ましいので、少し物がいいラジオペンチを用意しておくようにしましょう。
また、工具入れに保管しっぱなしにしていると工具が錆びることがあるのでオイルなどをまぶして収納しておくのが望ましいです。
いざ使おうと思って、工具袋から錆びて使えないペンチがガサッと出てきても困りますからね。
緊急用のバッテリー上がり対策
バイクは出先でバッテリー切れを起こすと復旧が大変です。
近くに救援車やガソリンスタンドがあればいいですが、平坦路の多い山道でエンストが起こるとさあ大変。こんな時に便利なのが小型のブースターです。
小型でスマホの予備電源にもなる携帯型のブースターを持っていくことで、いざというときに懐中電灯にもなりますし、スターターが回らないときには本当に助かります。
(※クリックで拡大)
スマホの充電もできるUSB端子も備えているので、できれば電装品の保険としてツーリング時にはバイク内の収納に忍ばせておけば心強いです。
パーツ破損トラブルの対策用品
バイクは自動車と異なり2つのタイヤで走っているので、当然ながらバランスをくずして転倒します。
そしてお分かりの通り、転倒しただけで簡単に破損するパーツばかりでバイクはできています。ウィンカーやミラーはもちろん、ブレーキレバーやステップも曲がって使いものにならない場合があります。
これでは走行に支障が出ますし、保安設備がない状態で走行すると他車両に迷惑が掛かるばかりでなく交通違反にもなりかねません。
なので、破損したときに何らかの形で部品を保持・接合して自宅まで帰還できるものを用意しておいたほうがいいですね。
バイクの転倒時に想定される破損トラブルと、それぞれ対処に必要なものは主に以下のとおりです。
想定される症状 | 必要になるもの |
レバー類の損傷 | 予備の両レバー |
ステップ・ペダルの損傷 | バイスロック |
カウル類の損傷 | 布ガムテープ、針金、タイラップ |
タイヤのパンク | パンク修理キット |
路上での修理 | バイク用三角板転倒時のパーツ破損トラブル |
転倒時のパーツ破損トラブル
以前にも少しご紹介したことがありますが、恥ずかしながら、筆者はとある峠で転倒しトップカウルステーが折れてバイクの前がなくなってしまったことがありました。
こんな感じです。もはや自走不可の様相。
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ただ、このときは幸いにも冷却水の漏れもなく、電気系統が生きていてエンジンもかかり、何とか走れることがわかりました。
あらんかぎりの布ガムテープでトップカウルを固定し、家まで命からがら帰ってきた事を覚えています。
こうして補修アイテムがあると何かと命拾いしますから、布ガムテープとタイラップ、そして針金は工具バックに入れておいた方がいいですよ。
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あと、ガムテープは端面が温度変化でベタベタになるのでビニール袋などで覆って保管スペースを汚さないようにしておくといいです。
曲がる・折れるレバーに注意
転倒すると高い確率でステップやブレーキ・クラッチレバーが折れます。
先ほどの転倒例ではレバーは少々曲がっただけで済みましたが、このほかの機会に、ブレーキレバーを折ってしまったことがあります。なので、長距離ツーリングなら必ず予備のレバーを持っておいた方がいいでしょう。
特にGWやお盆、正月にコトが起こると、部品なんて基本的にどこに行っても手に入りません。
出先で都合よくバイク用品店が見つかる可能性は低いですし、事前に適合する型を探して購入しておきましょう。ヤフオクでバラされたものを年式適合を確認した上で安く仕入れてもいいです。
あとは市販品でもよく見かけますが、レバーに対して加工を施す方法も有効です。
レバーの薬指が掛かる辺りでグラインダーで部材に切れ込みを入れて、転倒時の負荷がかかった場合にそこでポキっと折れるようにすることで根こそぎレバーが折れて機能不全になることを防げますよ。
ステップの修理方法と対策
ステップも左は90°曲がって仏になりましたが、何とか動かすことはできました。
問題は「チェンジペダルを失ったときに変速をどうするか?」です。
そうしたときは、バイスロックを使います。
参考元:https://www.webike.net/sd/2132937/ BAHCOバーコ:万能バイスプライヤー ¥4,262(税込)
チェンジペダルを失った場合、折れたり曲がったりしたペダルごと撤去して、シフトロッドにこのバイスをガッチリロックしてを取り付けます。
不安であれば、さらに針金とタイラップで固定すると、ペダルとして代用します。
参考元:https://www.worldimporttools.com/staff_blog/blog/2012/10/15.htm
こうすることで何とか生還できます、常備しておきましょう。
タイヤのパンクには要注意!
また、バイクのトラブルでも特に厄介なものの1つはパンクです。
タイヤはオンロード用(チューブレス)のタイヤとチューブタイヤでの修理方法も異なるので、対策方法を知っておくべきでしょう。
街中でのパンクなら、なんとかショップにたどり着いて対処してもらえるかもしれません。
しかし、出先でとなるとそうはいかなくなりますよね。ですからツーリングに行くとなれば、パンク修理キットは必ず持っておいた方がいいでしょう。
オンロード用(チューブレス)のタイヤがパンクした場合
チューブレスのタイヤがパンクした場合には比較的修理が簡単です。
パンクの原因のほとんどが釘が刺さったことによるものなので、刺さっている釘を引き抜いて補修材を注入することで応急的に走ることは可能になります。
また、釘が刺さった状態で空気が抜けていない場合には、近くにバイク用品店があれば不用意に抜かずにそのままにした方がいいでしょう。
いずれの場合も最寄りのバイクショップなどですぐさまタイヤを交換したほうが望ましいです。
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チューブタイヤがパンクした場合
チューブタイヤがパンクしてしまった場合は、チューブレスのタイヤよりも修理が困難であることが多いです。
パンクしたのをすぐに確認できた場合には応急的な修理で回復することもあり、こういった注入するタイプのパンク修理剤を使用することでチューブ内部から充填剤を入れて修理することもできるでしょう。
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しかし、パンクしてから気付かずに数分間走っていた場合には話は別です。
長めの距離を走行してしまったことによりチューブがタイヤ内部で裂けてしまっていると、こういったパンク修理剤を入れても復活しないことがほとんどです。
この場合には最寄りのバイクショップまでロードサービスを活用して搬送するしかないでしょう。
バイクでも三角板が必要って知ってました?
また、走行中にトラブルに見舞われた場合などは、必然的に路上で復旧対応をすることになりますよね。
このとき実は、高速道路でトラブルがあった場合にはバイクであっても三角停止板の標識提示が必要です。故障車がいることを後方車両に伝える義務をおこたった場合、1点減点になります。
2009年3月現在、日本国内の道路交通法規則上では、高速道路上でやむなく駐停車する場合に、三角表示板または停止表示灯の停止表示器材を設置しなければならない。積載義務でも購入義務でもなく設置義務であるため、仮に車両に積載していない状態で高速道路を走行しても違反とはならない。この義務に違反した場合は「故障車両表示義務違反」となり、点数は1点、反則金は6千円が課せられる[1]。
参考元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%A7%92%E8%A1%A8%E7%A4%BA%E6%9D%BF
ですからこちらの商品は、実は携帯しておくべきものなんです。
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高速道路で修理をする場合は待避所が前提になりますが、大事をとって用意できる場合はしておくべきアイテムですね。最近はバイク用にコンパクトに折りたためるものがあるので常備しましょう。
車載工具は基本的に買い足し覚悟で
ここまで車載工具に必要な部品や対策グッズを紹介してきましたが、出先での修理作業には何らかのパーツを外したり、付け替えたりすることが前提として必要です。
その時には周辺の部品を外したり、締めたりする必要性が当然出てくるもの。
実は筆者が今のバイクを手に入れたときは、中古だったので車載工具が余り物のようなサスペンションレンチ1本。これでは修理もままなりません。
そこで急きょ購入したのがこちら。
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こちらはバイクのセット工具部門で一番人気のセットとなっています。
- 六角レンチ一式
- コンビネーションレンチ3点セット
- +大小ドライバー
- ドライバーソケット
- プラグレンチセット
- プライヤー
この通り、「ネジを回す、ナットを締める」必要最低限のものが一式そろっているので、一応これぐらいを「標準的」といっていいと思いますね。
最低限の基準としてはプラスマイナスのドライバーはもちろん、つかみものを一本、そしてプラグレンチは必要です。
事実、たったこれだけでも筆者は店先で購入したブレーキパットの交換をしたり、ウインカーをLEDキットに交換したりすることができました。
保険のつもりで本格車載セットを用意するのも手
サスペンションがフルアジャスタブルなバイクであれば、車載工具のようにサスペンションレンチが入っていることは必須条件。
つまりサスペンションレンチと基本工具セットを組み合わせたような状態がスーパースポーツ等では「最低限」ということになるでしょうか?
また、車載工具は基本的に低コストで作られているものなので品質もハッキリ言って今ひとつのものが多いです。
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これは数千円の壊れやすいお手軽工具とは一線を画すもので、かつてゼロ戦の整備工具を造っていた日本が誇る工具のトップメーカー、KTCがバイク用にまとめたライダースメンテナンスセットです。
特長としては丈夫な工具に加え、ボックスツールのソケットをスピンナーやTレンチとして使える点であり、通常工具としても十分機能する点です。
また、車載工具では珍しいモンキースパナも入っているので、バイス代わりに曲がったものを直すときなども便利ですね。筆者も最初のうちはこれ一組だけでサーキットに出かけていましたから、割と手広くカバーできます。
後はこれにプラスティックハンマーやラチェットハンドルを入れると、作業も早くなりますよ。
これを基本セットとして、カスタマイズしていくことをお勧めします。KTCでこの内容がこのお値段、それは安いというものです。
まとめ
いかがでしたでしょうか、今回は筆者の経験を交えつつ、携帯工具として用途に合わせて持っておくべき工具や装備についてご紹介させていただきました。
車載工具はバイク任意保険よりも先に使うことになる、買い切りタイプのリスク対処ができる保険のようなものです。
他にも林道での走行などではバイクが斜面など水平以上に倒れたときなどの為にロープを用意したり、その時の用途に応じて想定される弊害を克服できるよう装備をカスタマイズしていってください。
結局、備えは大きければ大きいほど憂いなしです。安全運転で楽しいバイクライフを!
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